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【高卒就職】東京、神奈川、千葉の県内就職率に関するご質問にお答えします

多摩地区高等学校進路指導協議会事務局 参与/キャリア教育支援協議会 顧問 小林 英明

 

東京、神奈川、千葉の県内就職率が低くなる原因として最も可能性の高いものは東京、神奈川、千葉に埼玉も加えた一都三県間の「相互流出」です。今回のコロナ対策でも一都三県の都県境をまたぐ通勤客の多さが話題になりました。この中にはたくさんの高卒就職者も含まれていることは想像に難くないことでしょう。

首都圏の就職希望の高校生は大部分が自宅通勤を希望します。これは首都圏の年内内定率が低い原因の一つでもありますが、交通の便が良い一都三県では県内就職よりも自宅通勤しやすい「沿線就職」を目指す傾向を作っています。

東京は求人も多いため周囲からの流入は当然です。最低賃金が高く給与面での魅力もあります。給与に関しては都県境に近い埼玉の企業が東京への流出防止のために東京並みの給与を設定しているという話も聞きます。アルバイトの時給では常識と言われています。そのためか東京から埼玉への就職も給与面のハンディが減少して、通勤可能であれば都外への就職は抵抗がなくなっているようです。通勤ラッシュを考えれば「逆方向」のメリットもあるでしょう。神奈川はもともと賃金面では東京とほぼ同レベルであり、さらに交通至便のため東京からは就職しやすい地域です。東京での採用活動に積極的な神奈川の企業も見られます。

なお、考慮すべきこととして、学校は職安や教委の調査に回答する際に回答方法の指示により、就職先の都道府県は「就業地」ではなく「募集事業所(多くは本社)の所在地」で回答しています。理由は明示されていませんが、就業地を入社後に決定する企業も多く、学校では調査時に就業地を正確に把握できないためと考えられます。実情に合わない点もありますがやむを得ません。

教員時代、奈良県の企業が東京の事業所限定で募集した求人に内定した生徒は自宅通勤ですが本社求人なので統計上は奈良県に就職したことになりました。反対に他県の事業所に就職しても東京の本社で募集していれば都内就職です。このようなケースはたくさん扱いました。

参考資料:学校基本調査(2020.05.01)

【プロフィール】
1976年より 都立高校教員。
2004年より 都立拝島高校勤務、
2010年より 進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月 定年退職。
2019年4月 多摩地区高等学校進路指導協議会事務局 参与およびキャリア教育支援協議会 顧問 着任