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【高卒採用】社会的需要に柔軟に応える企業・事業が業績を拡大、動向に注目!(キャリア&就職支援ジャーナル25号より)

新学期がスタートした。高校3 年生は、いよいよ本格的に進路と向き合い始める時期だろう。就職志望者は、求人票公開まで残り2 カ月を切る中、業界研究や自己分析などの準備に忙しい日々を送っていることだろう。
ここでは、中小企業庁が発表した『2021年版中小企業白書・小規模企業白書』の結果などを参考に、新型コロナウイルス禍における社会的状況と企業の実情を見ていく。

18 歳人口がコロナ禍で抱える就職や将来に対する不安

今春3月に卒業した高校生のうち、就職志望者に対する採用選考期日等は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、一部スケジュールを調整して実施された。
 それを受けた翌令和3年度(令和4年3月) 卒業予定者については、従来通りのスケジュールが適用されると発表された(令和3年2月8日、厚生労働省)。すなわち、7月1日以降、企業による学校への求人票が公開され、同時に学校訪問が解禁される。9月5日
(沖縄県は8月30日)以降には学校から企業への生徒の応募書類の提出が開始。同16日以降から企業による選考開始および採用内定開始されることとなった。
 求人票公開までにほぼ2カ月を切っている。迫る期日に不安や焦りを抱える高校生も少なくないだろう。そうした中、興味深いレポートが発表された。

3 月25 日、日本財団(本部東京・港区)が「18歳意識調査『第35回―コロナ禍とストレス―』」の結果を公表した。そのアウトラインを見ていこう。「コロナ禍で閉塞感を感じていますか」という問いに対して、50.4%が「感じている」と回答。その理由の中に、「就職出来るかどうかについて」「自分のしたい、なりたいものがコロナで厳しい環境なので、将来が少し不安だと感じることがある」など、就職や将来への不安を見つけることができる。
 また、「この1 か月間、コロナ禍に関連して、体験したことを全て選択してください(複数回答可)」という設問では、全体の23.2%が「コロナ禍による進学・就職への悪影響」を感じていたことが分かった。それに対して「どの程度ストレスを感じましたか」については、「とても感じた」が49.6%、「少し感じた」が36.2%と、合わせて85.8%がストレスを感じていることが明らかとなった。国家レベルで新型コロナの影響を受ける中、若者も社会環境の大きな変化を実感し、"就職できるのか""将来就きたい職業に就くことができるのか"など、自分の将来像を描き出せない状況を不安に感じているのだろう。

サービス業で人材不足 社会的混乱で需要高まる

新型コロナ禍において、企業、とりわけ高校新卒者を相対的に多く採用している中堅・中小企業を取り巻く経営環境はどのように変
しているのだろうか。中小企業庁が4 月23 日に公表した『2021 年版中小企業白書・小規模企業白書』をのぞいてみよう。
 今回、同白書は「危機を乗り越え、再び確かな成長軌道へ」というテーマを掲げた。新型コロナウイルス感染症が中小企業・小規模事業者に与えた影響をキメ細かく分析し、その実態を明らかにすることで、危機を乗り越えるために重要なり組みや経営トップの参考になるデータ・事例を豊富に紹介している。

始めたい。

 特に注目すべきは「中小企業の雇用状況」だろう。調査結果によれば、「業種別の人員の過不足状況」について、例えば、「サービ
ス業」では、49.8%もの割合が「人員不足」と回答している。
 一方、「製造業」は「人員不足」が30.6%存在している反面、「人員過剰」とする企業も11.8%あった。厚生労働省の「職業分類」によれば、「サービス業」とは、「家庭生活支援」「介護」「保健医療」「生活衛生」「飲食物調理」「接客・給仕」「その他」など極めて多彩だ。そのため、活躍できる場面が幅広いものの、多くは「接客業」と隣接しており、対人関係をベースとする業務が多いため、顧客やサービス対象者に合わせる必要がり、勤務時間が不規則になったり、拘束時間が意図せず長くなったりするなどのイメージを持つ人が少なくないようだ。しかし、実際は、働き方改革な
どにより就労環境や勤務体系が見直されているケースが多い。また、新型コロナ禍に起因するところのデリバリーサービス等の普及やオンラインサービスの進展に伴い、人材を求める企業が多く、今後の伸びしろが大きいとされる「インターネット」や「介護」「人材派遣」などはもちろん、業界規模の拡大と共に今後の需要の高まりがより一層期待できる分野であるのは確かだ。この両者に関して、職種の状況を見ていこう。「製造業」では、製造工場や実店舗などに配置される「現場職」が不足しているとした企業は、71.4%に上る。製造業は広い敷地が確保できる郊外や地方に工場が設けられているケースが少なくない。少子高齢化や過疎化が進む傾向にあるそうした地域では、人材の確保が難しくなっているのかもしれない。
 「サービス業」では「技術職」の不足を訴える企業は69.0%。具体的には、「設計」や「システムエンジニア」「デザイナー」「ドライバー(運転手)」などがこれに該当する。新型コロナ禍を通して、さまざまなオンラインサービスが一気に開花し、テレワークやリモートワークが普及したことからも、必ずしもオフィスにいる必要があるとは限らない職種の需要が高まったことが考えられそうだ。
 この二業種における人員過剰に対する対応を見てみると、上位を占めているのは「雇用関係の助成金の活用」「新規採用の抑制」「休業日を設定」「残業時間の削減」などだった。ただし「雇用関係の助成金の活用」は「製造業」61.2%に対し、「サービス業」では39.3%。「残業時間の減」は同様に46.5%と26.5%というように、業界の特徴が際立っていた。また、「人員の削減(正規社員)」「人員の削減(非正規社員)」「賃金
の削減」については、「製造業」はそれぞれ10.0%、14.0%、12.9%。それに対して、「サービス業」は12.2 %、11.6 %、14.3 %。いずれも他の対応状況のほぼ半数以下に過ぎなかった。人員が過剰であっても、雇用を維持する企業が多いことが分かった。

早期から準備が必要社会動向を注視する

これまで見てきたように、業界によっては人員が不足し、人材を求めているという企業も少なくない。仮に、同じ業界であっても、視点を変えた新規事業に乗り出すなど、柔軟性のある構えを取ることができる企業が今後も業績を伸ばしていくに違いない。特にそれは、高校新卒就職者を幅広く受け入れている「製造業」「サービス業」も例外ではない。昨年来続く不安定な社会状況の中で就職活動を進め、かつ納得がいく結果を得るには、徹底した情報収集が必要となるだろう。高校新卒者の就職活動は、「一人一社制」を伝統的に維持している地域がほとんどであり、タイミングによって応募できる企業数に限りがあるからこそ、自分が働きたいと思える企業に就職したい。
 その意味で、マンパワーを求める業界や企業を知ることが、キャリアパスの端緒となる仕事との出合いにつながるかもしれない。まずは、どのような業界があるのか、そこで自分は何がしたいのかを正しく理解し考えるようにすることから始めたい。

(記事:キャリア教育&就職支援ジャーナル25号)