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【高卒就職】令和4年3月新卒予定高校生の就職活動、解禁直前のいま(キャリア&就職支援ジャーナル27号より)

7月1日から企業による学校への求人票公開が解禁され、本格的に高校新卒予定者採用がスタートを切る。昨年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による休校措置等の影響を受けて選考期日が1カ月間後ろ倒しになるなど、異例の措置が取られたが、今年度は従来通りのスケジュールに基づいて就職・採用活動が行われる。令和4年3月新卒予定者に関する採用選考期日や就職活動スケジュール、また求人票の見方や昨今の高校生を取り巻く採用環境や就職市場についてまとめる。

活動は従来スケジュールに。「一人一社制」に新たな動き

 令和4年3月新規高等学校卒業予定者の就職活動、およびこれに伴う採用活動に関しては、従来通りのスケジュールの適用が発表されている。

 具体的に見ていこう。7月1日から、企業による学校への求人票が公開され、同時に学校訪問が解禁される。そして、9月5日(沖縄県は8月30日)以降に始まる学校から企業への応募書類の提出に備えて、生徒たちは企業をより深く理解するために、会社見学等を通して、応募企業の絞り込みに着手していく。同16日からは、企業による選考および採用内定が開始されるという流れだ。
 高校新卒予定者を対象とする採用・就職について、多くの都道府県では、一定の期日までは一人一社に限り学校内で選考した生徒を推薦する「一人一社制」を採用している。しかし、近年、かつて「7・5・3問題」と揶揄された新規学卒者、とりわけ高校新卒就職者のうち、入職後3年以内に5割が離職しているとの指摘を受け、令和2年2月、国もその維持の可否について検討を始めた。
 そうした社会的な背景を受けて、採用活動解禁時から、複数企業への応募を可能とする方針へと切り替える地域が出てきている。例えば、和歌山県が今秋から、県内企業に限って「一人一社制」を廃止し、「複数応募制」にすることを発表し、注目を集めている。企業への複数応募を可能としている都道府県は、秋田県、沖縄県に続き3県目。また、大阪府も令和5年4月入社より「一人二社制」への切り替えに向けて検討しているところだという。
 「一人一社制」のメリットは考える以上に多い。例えば、特定の生徒に学校推薦が集中することなく、多くの生徒に応募の機会を与えることができたり、生徒が学業に専念できたりするなどが挙げられる。複数応募制に移行すれば、当然、学校内における生徒同士の競争も活発になることが予測されるため、結果的に望まない企業に不本意就職し、最悪の場合、ミスマッチによる早期離職につながりかねない。競争社会だから仕方がないと言い切れるのかどうか。最も大切なのは、高校新卒者にとって、どのように進めるのが最良なのかを十分に吟味することだろう。今後も慎重に検討を重ね、模索していく必要がありそうだ。

自分の興味・関心を明確に業界・職種をイメージする

求人票の公開や企業の学校訪問解禁を目前に控えるいま、生徒や教員は一体何をするべきなのか。高校の進路指導室等には、多くの場合、企業の会社案内や前年度を含む過年度の求人票等が保管されている。まずは、それらの資料に一度目を通す必要があるだろう。どのような企業があるのか、どのような仕事があるのかを知ることで、自分の興味・関心がある分野に気づけるはずだ。
 ある程度、興味のある業界・職種をイメージすることができれば、7 月1 日以降に学校に寄せられる求人票から、希望する企業を見つけやすくなるだろう。その上で、就職するに当たって、自分が重要とする条件を考える必要がある。希望する条件をすべて満たす企業を見つけることはなかなか難しい。そうだとすれば、一体どうするか。仕事内容を重視するのか、就業時間や休日等を重視するのかによっても変わってくる。自分が考える条件の中で「譲れない条件(優先順位が高い)」「できればかなって欲しい条件(優先順位が低い)」等を決めて、求人票を確認する必要がある。

応募前には「会社見学」社会人としての自分を描き出す

求人票から、興味がわく企業が見つかったら、応募前にその企業を見学しよう。会社がどこにあり、自宅から通える距離なのか。また、どのような環境でどのような人たちが働いているのかなど、入社後のイメージを膨らませることで、就職に対する心構えができるはずだ。ここで注意しておきたいのは、会社見学の時点で、企業の採用担当者なども自分を見ているということだ。見学だからといって気を抜かずに、服装や言葉遣いに気をつけるなど、社会人として最低限のマナーは心がけておきたい。

求人票の内容を徹底解説重要なポイントを押さえる

 高校新規卒業者向けの求人票は、「1. 会社の情報」「2.仕事の情報」「3. 労働条件等」「4. 選考」「5. 補足事項・特記事項」「青少
年雇用情報」の六つに分かれている。

①「事業所名」
 正式な企業名が記載されているため、求人票を見る際に最初に目に入る項目だろう。店舗名やブランド名とは異なる場合があるため間違えないように注意しておきたい。

②「所在地」
 企業の所在地が記されている。

③「従業員数」
 その企業で働いている従業員数を知ることができる。会社の規模をつかむことができ、就業場所が複数ある場合は、本社の人数のみが記載されていることがある。

④「事業内容」
 どのような業種の企業なのかを知ることができる。

⑤「雇用形態」
 「正社員」であれば、その企業に正式に雇用され、身分も保障され原則定年まで働くことができる。「契約社員」の場合は、待遇は正社員とあまり変わらないが、雇用期間に制限が設けられている。「派遣社員」の場合は、就職した企業から別の企業に派遣されて働くことになる。派遣先の正社員と同じ仕事内容であっても、待遇が異なる場合がある。

⑥「就業形態」
  「派遣・請負ではない」「派遣」「紹介予定派遣」「請負」のどれに当てはまるのかを明示している。就業時の立場を確認することができる。

⑦「仕事の内容」
 入社して実際にどのような仕事をするのかが、詳しく書かれている。作業上で必要な知識または履修科目などの技能は必ず確認が必要だ。

⑧「就業場所」
 実際に働く場所が記載されている。支店や工場、営業所などがある場合など、「②所在地」と必ずしも一致するとは限らないため注意が必要だ。また、これに関わる項目として同欄の右に「転勤の可能性」がある。

⑨「賃金等」
 基本給と手当をプラスした額から税金や保険料などを引いた額が、手元に入ってくる「手取り額」となる。支給される場合に、賞与やどのような手当てが加算されるのかも確認ができる。なお、「月々の手取り額×12」+「賞与から税金などを引いた額」が、その企業から実際に得られる年収の金額になる。なお、賃金形態等には、ひと月を単位として算定される賃金の「月給」、一日を単位として算定される賃金の「日給」、一時間を単位として算定される賃金の時給などがある。

⑩「月額」
  「毎月の賃金」のうち、「基本給(a)」「定額的に支払われる手当(b)」「固定残業代(c)」の合計額。ただし、実際に受け取ることができる「手取り額」は、この合計額から税金や社会保険料などが差し引かれたものであることを覚えておきたい。

⑪「昇給・賞与」
 「賞与」はいわゆるボーナスのことで、「昇給」は基本給などが増額されること。それらの回数と金額が示されている。

⑫「就業時間」
 働く時間を知ることができる。例えば朝9 時〜夜6時までなど、毎日の決まった時間帯のほか、シフト制や夜勤などで働く場合の時間帯が記載されている。

⑬「時間外」
  早出出勤や残業の有無を意味している。月平均の時間が書かれているが、月によって異なる場合もある。

⑭「休日等」
 休日が固定されている場合は何曜日なのか、週休二日制か、休日は年間に何日間あるのかが確認できる。

⑮「有給休暇」
 「有給休暇」では、休んでも賃金が支払われる日数が確認できる。プライベートの時間を充実させたいと考えている生徒にとって気になるのは有給を取得しやすい環境なのかどうかではないだろうか。一般に新入社員は、入社後6カ月間勤務すると付与される。

「福利厚生等」
 加入保険や宿舎の有無などを知ることができる。自宅から通えない距離の場合は特に注意したい項目だ。また、自宅から距離が離れている場合は「⑨賃金等」の部分にある「通勤手当」を確認し、交通費が支給されるのか、上限が設けられているのかについても注意しておきたい。

⑰「通学」
 働きながら通学を検討している生徒がいる場合は、「通学」部分を必ず確認するように指導したい。制度があって何らかの配慮がなされる場合は、2枚目の「㉑青少年雇用情報」内の自己啓発支援の有無及びその内容」に記載があるので、確認させておきたい。

⑱「応募・選考」
 応募の受付期間、選考月日・場所・方法などが書かれているため必ず控えておきたい項目だ。また、「応募前職場見学」が「可」の場合は、所定の手続きを踏むことで応募する前に見学することが可能だ。事前に企業の雰囲気を知っておくことは重要なため、可能な場合は積極的に参加するように指導したい。

⑲「選考方法」
 実施されない項目については線で消されている。適性検査にはさまざまな種類があり、内容が記載されていない場合もある。集団討論や実技などが行われる場合は、「その他」と記載されているため注意しておきたい。

⑳「補足事項・特記事項」
 規定の項目内では書き切れなかったことなどが書いてある。重要な内容が記載されていることもあるため、必ず確認するように指導が必要だ。

㉑「青少年雇用情報」
 過去3 年間の企業全体における新卒等採用者の人数や離職者数を把握できる。また、各種研修やメンター制度の有無など、入社前後に行われるさまざまなサポートの有無はもちろん、前事業年度の月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数などを確認することができる。

希望する進路実現に向けて若き即戦力として活躍を

これらのポイントを踏まえて、どの企業の採用試験を受けるのかを、総合的に判断して絞り込んでいきたい。また、生徒自身で条件に優先順位をつけさせることにより、求人票で必ず確認すべき項目を把握できるようにすることが重要だ。素直な吸収力により仕事の覚えが良いことや、早くからスキルを身につけることで、若き即戦力としての活躍が期待される高校新卒就職者。生徒が不本意就職に追い込まれることがないよう、この時期にしっかりと指導を行っておきたい。

(記事:キャリア教育&就職支援ジャーナル27号)