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COLUMN
【高卒就職】劇的変化の令和2年度。"Withコロナ時代"の高卒就職活動の在り方(キャリア&就職支援ジャーナル24号より)
採用活動の成果前年同期より下方新型コロナの影響映す採用状況
厚生労働省は3月17日、「労働経済動向調査(令和3年2月)」の結果を公表した。この中で特に注目したいのが、「令和3年新規学卒者の採用内定状況」に関する調査結果だ。
発表によれば、令和3年新規学卒者の「採用計画・採用予定がある」事業所の割合について、調査産業計では高校卒40%(前年同期比8㌽減)、高専・短大卒28%(同8㌽減)、大学卒(文科系)37%(同10㌽減)、大学卒(理科系)39%(同9㌽減)、大学院卒21%(同7㌽減)、専修学校22%(同5㌽減)となり、すべての出身学歴において前年同期の数値を下回る結果となった。
令和3年新規学卒者の「採用計画・採用予定がある」事業所について、高校卒の採用内定(配属予定)の状況を見てみよう。
すでに見た通り、高校新卒における「新規学卒者の採用計画・採用予定がある」は40% だった。具体的な内訳は、「採用計画数より多く採用内定(配属予定)をした」は10%、「採用計画数どおり採用内定(配属予定)をした」は49%、「採用計画数に採用内定(配属予定)が達していない」は42% となっていた。
この「採用計画数に採用内定(配属予定)が達していない」の内訳を見ると、「採用計画数以上の応募者数はあったが計画数までの採用内定は行わなかった」が4%、「採用計画数に応募者数が達していない」が38% だった。
約6 割の事業所が採用計画数通りの採用活動を進める一方、応募者数が採用計画数に満たず、人材確保が困難な事業所も少なくなかった。また、ごくわずかではあるが計画数まで採用内定は行わなかったという事業所もあり、少なからず新型コロナウイルス感染症が影響していると思われる結果となったと言えそうだ。
高校現場のリアルな声切実に企業との対面型機会が激減
大学新聞社とライセンスアカデミーは昨年末の12月8〜22 日、全国の高等学校のべ5,073 課程( 全日制・定時制等含む)の進路指導担当教員を対象に「コロナ禍における高校現場の変動実態調査」を実施した。有効回答数は715 校・721 件。調査結果の中でも特に就職環境に注目する。
「コロナの影響が、就職活動のどの部分に影響を及ぼしましたか」と尋ねたところ、最多は「職場見学」232 件だった。以下、「企業の訪問」211 件、「企業との接点」139 件、「オンラインツールの使用」109件、「採用情報」58 件と続いた。
「職場見学」や「企業の訪問」などが影響として挙げられた背景として考えられるのは、新型コロナへの罹患を回避するための施策として、オフィスへの出勤自粛と共にテレワークが求められたり、時短営業が要請されたりしたことに伴って生じたであろうマンパワーの著しい不足だ。実際に発令された「緊急事態宣言」に対する産業界側の対応と状況はその最たる例だろう。
24 件を数えた「その他」については、「就職イベントの中止」「求人の取り消し」「募集の一時中止」「採用スケジュールの全体的な遅れ」などが挙がった。また、「オンラインツールの使用」が件数を上げていることから類推できるのは、対面で接触する機会が減少することに伴い、「WEB面接」などの採用活動が増加しているのではないかということだろう。
コロナ禍において、企業の人事・採用担当者が直接学校へ足を運んで学校側と交流する場が激減し、就職志望者が会社の雰囲気を直接自分の目で確かめる機会さえも奪われてしまった。直接対面しなくても情報を入手することは可能ではあるが、面談や会話、相手の表情から得られる情報も少なくない。直接話をすることで相手の人柄などが伝わり、会社の良さを知ることも可能だ。そして、直接会社の雰囲気を感じ取ることで、入社後のミスマッチ防止にもつながる。オンライン上でのやり取りだけで完結するスタイルだと、会社や先輩社員の雰囲気まで把握することは難しい。そうした観点から、オンラインツールを活用した就職活動に不安を抱く教員が少なくないのかもしれない。
また、「1 次応募段階における就職希望者の内定率についてご回答ください」という問いに関しては、「2019年度内定率」の全国平均が81.9%だったのに対し、「2020年度内定率」は76.8%と、5.1㌽減少していることが分かった。新型コロナ禍を発端とする影響が経済動向や各企業の採用活動などに波及し、結果、就職活動にも大きな影響を与えていることが考えられる。
「就職指導で不安なことはありましたか(複数回答可)」に対しては、「求人数」が最も多く265件、そのほか、「県内企業の募集状況」「採用スケジュール」などの声が挙がった。
ミスマッチをいかに防ぐか今後の産業界の動向を注視
「どのような業種への内定が決まっていますか」という問いに、5つ以内で選択を求めると、「建設」188 件、「流通・小売」267件、「製造」389 件、「アパレル」48 件、「電気・ガス・インフラ」113 件、「飲食」91 件、「観光・宿泊」88 件、「医療・介護」209 件、「物流・運輸」217 件、「情報処理・IT」35 件、「美容」67 件、「施設・設備管理」74 件、「その他」113 件という回答を得た。
また、「現在未定者はどのような業界を希望していますか」という問いに、同様に5 つ以内で選択を求めた結果の上位2 業種は、すでに「決まっている」上位2 業種の「製造」「流通・小売」と完全に一致している。その意味では志向としてのマッチング性は高いようにも見える。
一方、「建設」「電気・ガス・インフラ」「医療・介護」「物流・運輸」「施設・設備管理」では、実際に内定が決まっている件数の多さと、未内定者の就職希望の件数に差が開いている。こうした現象は、その後の就職活動の推移や産業界の動向によっては、ミスマッチの温床にもなりかねない可能性が排除できない。希望通りの業種から内定を得られた生徒がいる一方で、希望通りの進路が実現できない者が一定数いることもあり得るだろう。
新型コロナ禍に伴い、あらゆる社会状況が変化し、激動の一年間となった令和2年度。令和3年度の就職活動スケジュールは、求人申込書の受付を6月1日に開始し、「企業による学校への求人申し込み及び学校訪問開始」が7 月1 日、「学校から企業への生徒の応募書類提出開始」が9月16日から始まることが厚生労働省から発表されている。新型コロナは収束のメドが立たず、その影響は数年にわたるだろうとの指摘も少なくない。令和2年度の就職状況を踏まえつつ、"With コロナ時代" の就職活動について、より良い在り方や好ましい構えをまだまだ模索していく必要がありそうだ。高校側はさらなるオンライン対策の徹底をすると共に、企業側には、会社の雰囲気をより感じ取れる機会を創出することが求められる。
(記事:キャリア教育&就職支援ジャーナル24号)