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【キャリア教育】高校現場、社会との交わりからキャリア観を醸成。学校外リソースを利活用(キャリア&就職支援ジャーナル22号より)

2割弱が「就職」の道へ 時代を象徴する就職者区分

文部科学省の『令和2年度学校基本調査報告書』によれば、令和2 年3 月に新しく高等学校(全日制・定時制)を卒業した者は103万7,284人( 男子52万3,777人、女子51 万3,507人)で、一昨年の平成31年3月卒業者の105万559人から1万3,275人の減少が見られた。
進路内訳に注目してみると、「大学(学部)進学者」は52万9,009人で全体の51.0%、「短期大学(本科)進学者」は4 万4,200人で4.3%と、半数以上の高校新規卒業者が大学・短期大学に進学を果たしていた。次に大きい割合を占めたのが「就職者等」の18万4,842人(17.8 %)だった。2 割弱の高校生が卒業後すぐに社会に出て働く決断を下している。
今回注目すべきは、この「就職者等」の内訳が刷新されたことだろう。昨年度までの「正規の職員等」「正規の職員等でない者」「一時的な仕事に就いた者」の3 区分から、①「自営業主等」②「無期雇用労働者」③「有期雇用労働者」、そして④「臨時労働者」―という4 区分へと定義の再構築がなされた。
①「自営業主等」は、個人経営の事業を営んでいる者及び家族の営む事業に継続的に本業として従事する者②「無期雇用労働者」は、雇用契約期間の定めのない者として就職した者③「有期雇用労働者」は、雇用契約期間が1 カ月以上で期間の定めのある者④「臨時労働者」は雇用契約期間が1カ月未満で期間の定めのある者―と改められた。
「産業別」に就職者数の多い順に掲げると、「製造業」が7万2,101 人(39.9%)でトップ、その次に「卸売業、小売業」が1 万9,100人(10.6%)、「建設業」が1 万5,473人(8.6%)、「公務」が1 万3,196人(7.3%)、「運輸業、郵便業」が1万1,001人(6.1 %) と続いた。
「職業別」では、「生産工程従事者」が6 万9,875人(38.7%)と最多を占め、「サービス職業従事者」が2 万4,117人(13.4%)、「事務従事者」が2 万1,687人(12.0%)、「販売従事者」が1 万5,027 人(8.3 %)、「専門的・技術的職業従事者」が1 万2,031人(6.7%)と続く。男女別の上位5職業を見ていこう。男子の就職者数は11 万1,212人で、「生産工程従事者」が5 万3,283人(47.9%)と突出して高く、以下、「建設・採掘従事者」が9,779人(8.8%)、「専門的・技術的職業従事者」が9,350人(8.4%)、「保安職業従事者」が7,926人(7.1 %)、「サービス職業従事者」が7,664人(6.9 %)の順だった。一方、女子の就職者数は6 万9,348人。そのうち、「事務従事者」が1万7,333人(25.0 %) で最も高く、「生産工程従事者」が1 万6,592人(23.9%)、「サービス職業従事者」が1 万6,453人(23.7%)、「販売従事者」が9,834人(14.2%)、「専門的・技術的職業従事者」が2,681 人(3.9%)と続いた。


価値観が多様化し、選択肢が増えているとされる現代社会にあって、しかしなお男子・女子の就職先は一面的に伝統的なそれと大き
くは変わっていないように映る。"働く人" が再定義された以上、今後の推移を興味深く見守る必要がありそうだ。
また、就職者の数は、男子が女子の1.6倍強となっている。卒業者数自体は男子のほうが約1 万人多いものの、その比率では説明が
つかないほどの対比となっている。その意味では、高校新卒者の8割近くを占める進学者層に、より多くの女子がいることが容易に推察できる。平成時代を象徴する大きな社会的変化の一つである女子の高等教育機関進学率は維持されていると考えてよさそうだ。
前年度と比較すると、「大学(学部)進学者」で5,543人、「短期大学(本科)進学者」で1,598人、そして(前年度までの「就職者」として調査・集計されていたものを、今年度の新定義に基づいて再集計した19 万1,698人に比べて)「就職者等」で6,856人の減少というように、それぞれにおいて減少傾向が

鮮明になりつつある。喧伝される「18 歳人口減少期」に突入した印象だ。
いずれにしろ、毎年100万人超の高校生が、その後のキャリア形成を大きく左右するであろう卒業後の選択として「進学」または「就職」を選ぶ岐路に立つことに変わりはない。そうした彼ら・彼女らの意思決定を支援する学校現場における「キャリア教育」の重要性は一段と高まっている。

多様な機会と人材交流 高校と社会による"共有"

高等学校における「キャリア教育」に追い風を吹かせるように、文部科学省では高等学校と地域、企業を結びつけた学びを促進する事業を起こしている。その一つが「学校教育における外部人材活用事業」だ。社会と連携しながらさまざまな人との関わり合いをもたらすことのできる学校教育の実現を目指す取り組みで、民間企業経験者やアスリート人材などが教育課程を担い、その専門性やこれまでの社会経験、能力を活かして生徒の学びをより一層豊かにすることが期待される。
ほかにも中山間地域や離島等に位置する高等学校において、複数の高等学校の教育課程の共通化やICT機器を活用した遠隔授業、地元自治体等の関係機関との連携・協働により、生徒の多様な進路実現に向けた教育・支援を目指す「地域社会に根ざした高等学校の学校間連携・協働ネットワーク構築事業(CORE ハイスクール・ネットワーク構想)」などが展開されている。
こうした取り組みからも学校外のリソースを最大限活用した教育は避けては通れないものであると考えられ、そこで多様な価値観にふれ、生徒自身の考えを深めていくことがキャリア観の醸成にもつながっていくと言えるだろう。

(記事:キャリア教育&就職支援ジャーナル22号より)