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【高校進路】就職から進学に進路変更する者が増加。伸びる企業の動向に視線(キャリア&就職支援ジャーナル26号より)

求人数・求職者数ともに激減「進学」に進路変更する事例も

厚生労働省は5月18日、「令和2年度『高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況』(3月末現在)」を取りまとめた。同調査は、高校やハローワークからの職業紹介を希望した生徒を対象としている。就職内定者数は14 万5,150 人(前年同期比2 万1,438人減少) で、就職内定率は99.1 %( 同0.2 ㌽低下)。求人倍率は、2.64 倍( 同0.25㌽低)という結果が明らかになった。
 就職内定率自体の低下は前年度と比較してわずかな印象だが、求人数に関しては38 万6,205人(同20.2%減)となっており、実数ベースで9 万8,029人も減少した。求職者数は14 万6,429人(同12.7% 減)で、同様に2 万1,365人減少。
こうした結果から類推できるのは、巷間伝わるように、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による求人数の急減などを懸念し、就職志望から進学志望などへの進路変更をした人が少なくなかったようだということだろう。
 昨年12月、大学新聞社が、全国の高等学校のべ5,073 課程(全日制、定時制等含む)の進路指導教員を対象に実施した「コロナ禍における高校現場の変動実態調査」では、コロナ禍による進路への影響について質問している。それらの回答の中には、「専門学校への進学希望が増えた」「公務員志望から短期大学志望への変更」「就職から進学への変更があった」という趣旨の意見が少なからず見受けられた。また、「行きたい会社の求人がない」「企業見学後、応募受付しなくなったと断られる」などの切実なケースが報告された。採用抑制や大きな影響を受けた業界の状況を考えて、平時と異なる就職活動を避けたいという高校生や保護者が少なくなかったと考えられる。
 先に掲げた厚労省調査のうち、都道府県別の就職内定率を見ていくと、トップは福井県で100%。次いで、新潟・岐阜・三重の3県が99.9%、秋田・埼玉・富山・鳥取・島根の5県が99.8%と続いた。これら9県中8県は、前年同期と同じかそれ以上の数字となっている。元来、地方都市では地元就職の傾向が強かったが、新型コロナ禍によって、例年以上に地元志向が高まっているとも言えそうだ。
 企業規模別の求人状況はどうか。特に注目して然るべきなのは、高校新卒者を積極的に採用している中小・小規模企業の求人数の減少数が大きいということだろう。
 企業規模が「29人以下」の事業所は12 万9,907人で、前年から2 万3,524人減少した。以下、同様に「30〜99人」は11 万5,088人で前年から3 万390人減少、「100 〜299人」は7万2,973人で昨年から2万2,261 人減少した。やや古いデータにはなるが、総務省「平成24年就業構造基本調査」によれば、中小企業における企業規模別正社員の最終学歴は、約半数に当たる45.9%を「高校・旧制中卒」が占めている。中小・小規模企業にとって、人材供給源として高校新規卒業者に依存するところは小さくなく、期待は大きい。それにも関わらず、これほど求人数が減少しているという事実に、新型コロナが与える影響の大きさを感じざるを得ない。

ほぼすべての産業で求人減伸びる業界と取り組みに注目

産業別の求人状況を見ていこう。「電気・ガス・熱供給・水道業」は2,099人で前年同期から増加に転じたものの、それ以外はすべての産業で求人数が減少に転じている。
 特に減少数が大きかったのは、「製造業」の10万8,571人で、前年度から3万7,290人減少した。以下、「卸売業、小売業」で4万9,162 人(同1 万3,399人減)、「宿泊業、飲食サービス業」で1 万5,990人(同1 万2,813人減)という結果だった。
 令和2 年4月から令和3年5月の本稿執筆時点までに計3回の「緊急事態宣言」が発出された。思うように減少しない新規感染者数に、宣言解除の見通しは立っていない。不要不急の外出制限・制約が求められたことから、新型コロナ禍前と比較して、旅行やレジャーなどに出かける人は急減。結果、「人流」に直結する「宿泊業」が大きな打撃を受けている。「飲食サービス業」についても、短縮営業要請や酒類提供の停止、また宴会・会食需要の急減に伴い、求人数が減ったことが大きな原因の一つとして考えられるだろう。
 一方、新型コロナ禍を転機として、潜在するニーズや自社の強みに着目し、柔軟に事業を再構築している企業は少なくない。実は、新型コロナ禍において、「最高益」を出している企業が続出しているのも事実だ。

特に大きく飛躍しているのは、巣ごもりや高速通信「5G」関連の需要等を意識したビジネスを展開する有力企業だ。自宅で楽しめるゲームを製造する企業や、テレワーク・リモートワークを後押しするIT 関連企業が存在感を放っている。また、飲食サービス業では、テイクアウトやデリバリーサービスなどの需要の高まりを受けて、柔軟に新サービスを取り入れる企業も少なくない。
 さらに、新型コロナ禍で私たちの日常生活における必要不可欠な仕事を担う「エッセンシャルワーカー」にも注目が集まった。代表例として、「医療従事者」「スーパーマーケット・コンビニエンス・ストアスタッフ」「介護福祉士」「保育士」「役所職員」「郵便配達員」などが挙げられる。これらの職業が果たす社会的役割は大きく、景気や新型コロナなどの緊急事態に左右されにくい職種だと言える。
 しかし、現在の業績が良いからといって、今後もそれが続くという保証は全くない。先行きが不透明だからこそ、入念な情報収集を行い、自分にとって最善の「選択」をするための材料を揃える必要がある。ピンチをチャンスと捉え、着実に伸びている業界・企業を見逃さないようにしたい。

(記事:キャリア教育&就職支援ジャーナル26号)