1. HOME
  2. 特集
  3. 【高校生の就職調査 シリーズ⑦】<早期離職>情報不足が与える影響(キャリア&就職支援ジャーナル31号より)

特集

COLUMN

【高校生の就職調査 シリーズ⑦】<早期離職>情報不足が与える影響(キャリア&就職支援ジャーナル31号より)

 進路情報研究センター・ライセンスアカデミーは9月、全国の高等学校進路指導部のべ5,049 校(全日制・定時制・通信制、一部サポート校含む)を対象に「新規高卒就職に関するアンケート調査」を実施した。今号では、教員の視点から見た「一人一社制」、高校新卒就職者の「早期離職問題」など、就職指導現場の実態に迫る調査の結果内容を詳報する。

高校生の就職調査 シリーズはこちらから
【高校生の就職調査 シリーズ①】<一人一社制>8割の教員が支持する理由(キャリア&就職支援ジャーナル31号より)
【高校生の就職調査 シリーズ②】<就職指導> 1年生からの目標設定(キャリア&就職支援ジャーナル31号より)
【高校生の就職調査 シリーズ③】<進路行事>高校で開かれるイベントに信頼感(キャリア&就職支援ジャーナル31号より)
【高校生の就職調査 シリーズ④】<会社選び>1年生からはじまる企業の研究(キャリア&就職支援ジャーナル31号より)
【高校生の就職調査 シリーズ⑤】<教員の声>高校が高卒採用企業に求めること(キャリア&就職支援ジャーナル31号より)
【高校生の就職調査 シリーズ⑥】<職場見学>7月中旬から始まる比較検討(キャリア&就職支援ジャーナル31号より)
【高校生の就職調査 シリーズ⑦】<早期離職>情報不足が与える影響(キャリア&就職支援ジャーナル31号より)

離職理由

高校新卒就職者の落とし穴 希薄な職業観と情報不足

「早期離職の大きな要因になっているものは何だと思いますか(上位五つまで)」の問いに、教員の目線で最も多く寄せられたのは「人間関係の問題」で67.7%だった。以下、「安易な職業選択」51.9%、「職業意識が希薄」49.7%、「仕事内容が合わない」43.1%、「やりたい仕事と違った」40.8%と続いた(図7)。

注目したいのは、「職業観の希薄」や「仕事内容が合わない」が早期離職理由の上位に入っていることだ。これは、「働く意義」や「自分は何をしたいのか」という職業観が不十分であるため、実社会で働くことに対する意識が高まっていないのではないかとの見方なのだろう。「安易な職業選択」が入っているのもそのためだと推察される。また、企業研究を十分に行わずに応募や選考へ進むことで、企業側が求める人材像とミスマッチが生じてしまいかねず、結果として「仕事内容が合わない」「やりたい仕事と違った」ということにつながるとも考えられそうだ。

ここで離職率のアウトラインを押さえておきたい。厚生労働省が令和2年10月30日に発表した「新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)」によると、平成29年の高校新卒就職者の就職後3年以内の離職率は39.5%(前年比0.3㌽増)だ。

その内訳を見ていくと、1年目離職17.2%、2年目12.3 %、3年目10.0 % となっている(参考)。

同じ年の「大学新卒就職者」のそれを見ると、順に11.6 %、11.4 %、9.9 % で計32.8%となっている。2年目・3 年目は大きな差となってはいないことから考えれば、1 年目離職率の「17.2%」を改善することが、高校新卒就職者の離職率減少のキーを握ると考えられそうだ。社会経験が乏しい入社1年目。そのタイミングで挫折や困難を感じ、乗り越えることができず離職してしまうケースが少なくないのだろうか。

ライセンスアカデミーの調査結果から類推できるのは、社会人としての意識が希薄だったり、業務内容をそれほど理解していなかったりということが早期離職につながっているのではないかと多くの教員は考えているらしいということだ。これは、離職状況や離職理由を扱う多くの公的・私的調査のさまざまな結果と通底している。

「就職者と企業のミスマッチを防ぐため、どのような対策が必要だと考えますか(自由記述)」にはさまざまな観点からの意見が寄せられた。
「どうやって企業を絞り込むかという方法論ではなく、まずは健全な職業観の育成が第一」と、やはり「職業観の希薄」に対する問題提起をする教員が見られた。それに対して、「高校在学中に、いろいろな業種、職種を就労体験する機会がさらに必要」「企業研究や企業見学などを積極的に行い、自分が社会人になるという自覚をしっかりと持たせること。生徒が自主的に行っていくことが必要ではないか」「社員との懇談会などで、少しでも現場のイメージを持つ」など、就職指導の中で早期段階から企業との連携を強化し、充実したキャリア教育を行うことで、職業観の育成につながる授業の実施やイベントへの参加が待望されているとの声が寄せられた。

また、「生徒が企業のことを深く知った上で応募することが最も大切。就職担当の教員も企業と生徒をよく理解した上で指導することもとても重要」「早めの指導開始(本校は2年次の9月から)。担当教員による企業の詳細な情報の把握」と、教員と生徒が就職に向けて共に意識を高めていくことが必要という意見もあった。

ほかにも、多くの教員が支持する「一人一社制」の維持を踏まえて、より良い就職活動が行えるように改善を求める声も寄せられた。「応募前職場見学をより充実させるため、求人票の配布開始を2週間早める」「求人票公開から応募開始までの期間を長くして企業研究の時間を確保」と、日程の再構築を検討して欲しいとの指摘もあった。いずれの意見からも分かるように、就職指導に企業の協力は不可欠だ。その上で、「企業側の『良い部分』だけのアピールではなく、仕事の『厳しい部分』もしっかりと伝えて欲しい」「企業は不都合なことがあっても、それをきちんと説明することで解決すると思う」など、総合的な判断をするためにもシビアな面も教えてもらいたいという要望も少なくなかった。