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【高卒就職】就職志望者の就職内定率62.0%。2年連続の求人数減、来年度以降に焦点(キャリア&就職支援ジャーナル32号より)

 高校新卒就職志望者の採用選考が解禁されてから2 カ月間以上が経過した。昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、企業等による選考開始および採用内定開始が例年より1カ月間後ろ倒しになったが、今年度は再び従来のスケジュールに戻り、高校生の就職活動は大詰めを迎えている。
 厚生労働省などから発表された最新の情報を概観し、現在の内定状況や若者の早期離職の現状等をお伝えする。

求人数・求職者数等は減少求人倍率は反転の2.66倍

厚生労働省は11月12日、「令和4年3月高校・中学新卒者のハローワーク求人における求人・求職・就職内定状況」を公表した。
発表によれば、高校新卒就職希望者の就職内定率は62.0 %( 前年10 月差2.2㌽低下)だった。また、就職内定者数は8 万5,724人(前年10 月比12.4%減少)、求人数は36 万8,520人(同0.3%減少)、求職者数は13 万8,328 人(同9.2%減少)、求人倍率は2.66 倍(前年10 月差0.23㌽上昇)だったことも分かった。

なお、前年の「令和2年10月末現在調査」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響により、就職に関する選考・内定開始期日などの変更があったことを踏まえて、調査時点が10 月末に代えて取りまとめられているため、今回を含む例年通りの「9月末現在調査」と調査期日が異なることに関しては一定程度留意する必要がある。

一変した「超売り手市場」採用環境の回復は不十分

それでは、COVID-19 の影響を受けなかった、あるいは受けても限定的だったと考えられる令和2年3月卒業者の状況はどうだったのだろうか。厚労省によれば、令和2年3月卒業予定者(当時)の令和元年9月末現在の就職内定率64.0% に対して、令和4年3月卒業予定者はすでに見たように62.0%。2.0㌽の減少だ。同様に、就職内定者数は10 万8,528人に対して8 万5,724人、求人数は46 万5,920人に対して36 万8,520人、求職者数は16万9,449人に対して13 万8,328人、求人倍率は2.75 倍に対して2.66 倍と、いずれも減少している。最も重要な指標の一つ、「求人数」は9万7,400 人マイナスの激減で、20.9パーセントも減少した。冒頭で確認したように、令和4年3月新卒における求人数、内定率などの就職環境と令和3年3月新卒におけるそれには、それほどの差異は見受けられない。一点、「求職者数」が1万4,074 人(9.2%)減少の13万8,328人となっているのが目立つ程度だ。
もちろん、「求人数」は11年ぶりの落ち込みを記録した昨年度をさらに下回る2年連続のマイナスではあるものの、少なくとも昨年度に限った対比では0.3% 減少にとどまるため、"また大きく落ちた" というニュアンスではなく、急減した状況が好転することなく、さらに少し難化したという印象だ。しかし、グラフに示すように、平成23年度以降は、文字通りの右肩上がりで求人数が伸び続ける「超売り手市場」だったが、これも10年振りの求人減となる気配が濃厚だ。特に、「香川」(9.8%減少)、「沖縄」(9.1%減少)、「大阪」(7.7%減少)、「東京(7.1%減少)、「神奈川」(3.8%減少)、岡山(3.6%減少)などで減少幅が大きくなっている。この事象の背景として、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を境にした景気変動の影響は無視できないが、最も大きなキーはやはり新型コロナウイルスショックだろう。これ以外に考えられるのは、「18歳人口の減少」と「国の高等教育の修学支援新制度の導入」(令和2年4月から実施)という社会的動向だ。18 歳人口の減少は大学入試においても重要なファクターの一つとなっている。

新型コロナ禍の悪影響か急激に減少した求職者数

18 歳人口の戦後のピークは、平成4(1992)年度の204万9,471人で、以降は平成21(2009)年度から30(2018)年度までの"踊り場" があったものの、再び縮減期に突入して現在に至る。令和2年3月時点のそれは約110万人で、令和4年3月時点は約109万人と試算され、概算ベースで約1万人少ない。先に見た求職者数の差は1万4,074人減少だから、"自然減" にしては大き過ぎるのではないか。他方、令和2年4月から「国の高等教育の修学支援新制度」が導入されたことによって、制度適用要件を満たす世帯の進学率を約7 〜11㌽押し上げたと推計できるとの公的発言がなされている。そのため、実は、根底には進学志望があったものの、家庭環境や経済的な理由などから「就職志望」だとしていた者たちが、一定程度恩恵に浴して進学志望に転じた結果、就職志望者が相対的に少なくなった可能性は排除できない。
もともと「進学」を考えていなかった個別生徒にとって、「魅力的な」「待ち望んでいた」「条件が揃っている」といった"良い求人"が届かないため、急遽進路を変更して、「進学」や「公務員」に切り替えたというケースもありそうだ。現に、高校新卒者を数多く受入れている「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」「運輸業、郵便業」を中心に企業業績は大きく落ち込んでいる。それまで「進学」を全く意識していなかった生徒が、経済的支援が得られそうだからといって真逆の「進学」に方向転換というのは、考える以上に容易ではなく現実的ではないのではないか。ここはやはり、業績が縮んだ企業側の採用活動からの一時撤退の余波と考えたほうが良さそうだ。
COVID-19 の感染拡大の影響が長期化する流れを受けて、需要が落ち込み、減産となった自動車産業を含む製造業や建設業も加え、採用意欲に少なからぬ影響を与えているのだろう。その意味では、高校生の就職活動は2 年前よりも厳しくなっており、まだ十分回復しているとは言い切れないと見ることが可能だ。
日本におけるCOVID-19の感染者数は、ワクチン接種が進んだことなどを背景に減少傾向に転じ、緊急事態宣言も蔓延防止等重点措置も現在はすべて解除されている。しかしながら、「第6 波」の襲来の可能性は依然として喧伝されたままだ。世界的に新たな変異株である「オミクロン株」が流行するなど、日本も予断を許さない状況になりつつある。今後の日本経済や就職活動に影響が出る可能性もあり、最新の動向は常にチェックする必要がある。

3 年以内の離職率36.9%!改善された「1年目の離職率」

 厚生労働省は10月22日、「新規学卒就職者の離職状況」を公表した。発表によれば、新規高卒就職者の就職後3年以内の離職率は36.9% で、前年より2.6㌽減少したことが明らかになった。学歴別に見てみると、大学卒業者は31.2%(前年差1.6㌽減)、短大等卒業者は41.4%(同1.6㌽減)、中学卒業者は55.0%( 同4.8 ㌽減) で、いずれの学歴区分においても離職率が前年より低下していたことが分かった。
高校新卒就職者の離職率36.9%の内訳を見ていくと、1年目離職16.9%(前年比0.3 ㌽減)、2年目11.9%(同0.4㌽減)、3年目8.1%(同1.9㌽減)となっている。同じ視点から「大学新卒就職者」のそれを見ると、順に11.6 %、11.3%、8.3%で計31.2%となっている。両者間において、2年目・3年目は大きな差となってはいないことから考えれば、1年目離職率の「16.9%」を改善することが、高校新卒就職者の離職率減少のキーを握ると考えられそうだ。
冒頭で述べた通り、9月末現在の高校新卒就職希望者の就職内定率は62.0%。2カ月近く経過していることを考えると、内定率はもう少し上昇しているものと予測されるが、いわゆる「二次募集」以降にどのような影響が出てくるのかはいまのところ不透明だ。大きな社会的災禍の影響は一年単位で遅れて表れるとの指摘もある。新型コロナ禍という同一の理由ながら、「進学→就職」、またその真逆の「就職→進学」に転じる者など、二極化が一つの特徴と言えるのかもしれない。